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阿部しのぶ　プロフィール

　　山形県出身。染色家、着装、礼法指導者。

　　日本の伝統文化とふるさとの山形をこよなく愛し、きものをデザインから染色・仕立て・コーディネート・着装まで一貫して手がける。

　　きものをはじめ、帯・組紐・帯揚げなどを総合的に制作し，染色・着装の指導も行っている。

　　きものコンサルタント一級講師・礼法講師として、企業や各種講座でも指導している。

日本文化への想い　　阿部しのぶ

　私たちの国・日本は、いにしえより約一万三千年の歴史と共に、心優しい穏やかな文明を育んでまいりました。世界で最も自然に恵まれた風土で，人間にとって自然（カミ）は、すべてが恩恵であった為に、自然と人間は対立することなく『融合一体』の関係にありました。それ故に、自然を尊び、ふるさとの土の記憶を忘れること無く一生涯を過ごす日本人はまた，他者を思いやり，深い相互尊重の社会を築いてまいりました。つまり、私たち日本人の精神文化は、日本古来の恵み豊かな美しい自然や風土の中で，他者を排他・排除すること無く，融合し受け入れることにより、更なる高みへと培われてきたのです。

　こうして長い歴史の中で、私たち日本人は、八百万の神々や自然から齎（もたら）される多くの恵みに対して敬い尊ぶ心、森羅万象において『有り難し』と思う心を、有史以前の遥か昔より、細胞に刻んでいるのです。

　人間（ひと）は誰でも、目には見えないカミの命によって，生かされ、守られ、導かれていることを知り、また、相手に対して尊敬の念を抱き、お世話になっていることに，そして、今ここにこうして”在る”ことに、感謝の気持ちが身体の奥深くから溢れ出るとき，その心を形に表し，言葉に表現して、行動で示したくなります。そうした心を伴った表現が『道』となり、人間が生きる為に不可欠な衣食住の中にさえも、精神文化を伴って宿り、茶道・華道・書道・武道・剣道・柔道をはじめとした日本文化一つ一つに，しっかりと伝承され継承されているのです。　

　この揺ぎ無い『精神』こそが、私たち日本人の誇り得る『日本文化』の礎なのだと思います。

作品について　　何故、草木染なのか

　　　　　　　　何故、羽織なのか　　　　　阿部しのぶ

　今回の制作依頼は、”山辺木綿”ありきでのスタートでした。

　それを踏まえて、自然の恵み豊かな山形の地で『山形らしさ』、つまり、私のイメージするところの、寡黙で一本気な”山形の持つ無骨さ”を全面的にだした作品を、提案させていただきました。試行錯誤を重ね熟慮した結果、木綿という素材に対しての染料の堅牢度など、気掛かりは残るものの、自然との融合を意識した草木染による作品で，自然豊かな山形の四季十二ヶ月を，十二枚の『羽織』として制作することに致しました。

　天然染料による染色は，おそらく有史以前より行われ、人々の衣服を始め生活を彩ってまいりました。古の人々が衣服などを染め始めたきっかけは，八百万の神々の宿る草木をそれらに移し、身につけることにより、穢れから守られますようにとの祈りを込めて，或は，草木の持つ薬効を期待して纏ったのでしょう。絵巻物に描かれている平安貴族の衣服である十二単もまた、すべて天然染料により移ろいゆく大自然の表情を、丁寧な工程を経て移しとり、かさねの色目で表現したのです。

　この草木染の技法を用い，山辺木綿の白生地に染色し、『着物』として考えたとき，素材の硬さ・生地の厚み・『着物』としてのかたちを再考することが鍵となりました。

　この度の事業計画の中での、山形を来訪される外国の方々を始め，留学生や旅行者へのアンケートの結果、男女の別に関係なく，着装にかかる時間は５分程度が望ましいという意見も多く，正直悩みました。なぜなら、いわゆる着物の着装には、肌着、長襦袢、着物、帯、、、と少なくとも十五分程度を見積もらなければならないからです。

　只只、民族衣装である『きもの』と伝統文化を通して、日本のすばらしい精神文化を広く知っていただけたなら、、、そうして辿り着いたのが、この度制作する『羽織』です。羽織は、着物の一種であり、礼装・防寒の目的から長着（着物）の上に羽織るものです。冒険を覚悟の上で申し上げますと、長着の代わりに洋服の上からでも着替えること無く、羽織ることも出来得るということです。より短時間で気軽に、日本の民族衣装に触れていただくことが可能となります。

　現在では、お祭りや人気アニメーションやゲームなどのコスプレ以外で、お目にかかることも珍しくなった羽織を、男女共通アイテムとしてデザインし、限りなく普段使いの日常に近づけた形で、制作いたしました。

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